抗体依存性感染増強 コロナワクチン

May 3, 2024, 1:11 am

後に商品名「Dengvaxia」と名付けられるこのワクチンは,phase 3でデング感染すべてに対して 56. 5% の VE を示しました.さらに,重症デングの1形であるデング出血熱に対する VE も 88. 5% と良好な数字を示したのです. 今回の3ワクチンと状況は似ています. Dengvaxia市販後の懸念 しかし,翌2015年に発表された下記の治験後長期観察において,不安な結果が報告されました. 接種から3年以内のデング感染による入院(※重症化を示唆する指標)を観察したところ,9歳以上の小児および成人ではプラセボに比して入院の相対リスクが 0. 50 (95%CI 0. 29-0. 86) と有意に減少しましたが,9歳未満の小児については入院の相対リスクは 1. 抗体依存性感染増強 コロナワクチン. 58 と上昇しており,「実薬群の方がデング入院が多くなる」という結果となりました.ただし95%信頼区間は 0. 83-3. 02 と1をまたいだため,統計学的な有意差は認められませんでした. 「9歳未満小児で実薬群の方がデングによる入院が増えたが,統計学的有意差はなかった」という微妙な結果に対して,掲載誌の New England Journal of Medicine は掲載号のエディトリアルで警告を発しています. この流れの翌年2016年,フィリピン政府は世界で初めて Dengvaxia を「9歳以上の小児および成人」に限定して定期接種として導入しました.長期観察で9歳以上はデング入院が減少していたためです. 未感染の人口集団へのDengvaxia接種によるADEの統計学的な検出 その後6ヶ月超の間に83万人あまりの小児が Dengvaxia 接種を受けた頃,2017年11月末に製造元の Sanofi Pasteur が重大な発表を行いました. Sanofi Pasteurのプレスリリースによると,Dengvaxia のさらなる長期成績を解析したところ, Dengvaxia接種前に既に1回以上のデング感染歴があった者では,Dengvaxia は2回目以降のデング感染も重症デングも予防する Dengvaxia接種前にデング感染既往がなかった者では,Dengvaxia 接種後の初めてのデング感染によって,逆に重症デングが増加する という結果が明らかとなったというのです. そして Sanofi Pasteur は Dengvaxia の添付文書を「接種対象者はデング感染既往がある者に限る」と改訂したのでした.

  1. 抗体依存性感染増強 ワクチン

抗体依存性感染増強 ワクチン

スパイクタンパク質の構造 スパイクタンパク質は3量体(青色、水色、黄色)をとり、S1とS2領域から成る。S1領域は、さらにRBDとNTDに分けられる。 <感染増強抗体の解析> スパイクタンパク質はNTD、RBD、S2から構成される (図1) 。COVID-19患者の免疫細胞から同定された76種類のスパイクタンパク質に対する抗体を解析したところ、スパイクタンパク質へのACE2の結合を阻害するRBDに対する抗体ばかりでなく、ACE2の結合性を増加させる抗体がNTDに対する抗体の中に存在することが判明した (図2、以下 感染増強抗体) 。一方、ほとんどの抗体は、スパイクタンパク質に結合しても、ACE2の結合性に影響を与えなかった。 これらの感染増強抗体は濃度依存性にACE2の結合性を増加させたが、それ以外のNTDに対する抗体にはACE2の結合性の増加は認められなかった (図3) 。 図2. スパイクタンパク質へのACE2の結合性を阻害する抗RBD中和抗体(青)ばかりでなく、ACE2の結合性を増加させる抗NTD感染増強抗体(赤)も存在することが明らかになった。 図3. 新型コロナウイルス感染症ワクチンの副反応・安全性・有効性について | 香芝市公式サイト. 抗NTD感染増強抗体(赤字)をスパイクタンパク質発現細胞に加えるとACE2の結合性が濃度依存性に増加した。一方、抗NTD抗体でもACE2の結合性を増加させない抗体も存在した(黒字)。 さらに、これらの感染増強抗体は、中和抗体によるACE2結合阻害能を減弱させることが判明した (図4左) 。つまり、感染増強抗体が産生されると、中和抗体の効きが悪くなる可能性が考えられる。また、感染増強抗体は実際に新型コロナウイルスのヒト細胞への感染性を顕著に増加させることが判明した (図4右) 。感染増強抗体による感染性の増加は、抗体によるスパイクタンパク質への直接的な影響であり、Fc受容体は関与していない。従って、今までに知られていた抗体依存性感染増強とは全く異なる新たなメカニズムが存在することが判明した。 図4. 感染増強抗体は、中和抗体によるACE2結合性阻害能を減弱させた(左)。感染増強抗体は、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)のACE2発現細胞への感染性を増強した。 次に、感染増強抗体の認識部位を明らかにするために、NTDの様々なアミノ酸をアラニンへ置換することによって、感染増強抗体のエピトープの解析を行った。その結果、感染増強抗体はいずれもNTDの特定の部位を認識することが明らかになった (図5左) 。さらに、抗体の結合様式を解析するために クライオ電子顕微鏡法 にて、抗体とスパイクタンパク質との複合体を解析すると、NTDの下面に結合することが判明した (図5右) 。 図5.

もちろん,そのようにして発見されるADEならば,頻度は相当に低いはずです.であれば,「この重症COVID患者はワクチン接種が原因だ」などと断定することはまず困難でしょう. 未知の重篤有害事象と同じく,相当低頻度と予想される接種後ADEのリスクと接種しない場合の感染リスクを比較すれば,接種によるメリットの方がずっと大きいと考えられます. 個人の選択としては未知のADEへの懸念を理由に接種を控えるのは得策ではありませんが,ワクチンに対する医学的評価としてはADEの可能性は常に検証せねばならないということです. その他,新型コロナとADEについて下記の総説もご参照ください. 目次に戻る

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